ハッサン・イスマイル・アブド・アルカドゥム・アルルエイさん

イスマイル・アブド・アルカドゥム・アルルエイさん

第一次湾岸戦争の翌年、イラクの首都バグダッドで生まれたハッサン。バグダッド工科大学で電気工学を専攻し、米国のコロンビア大学、ミズーリ大学でも学んだ。国連開発計画でボランティアを始め、開発のためのイノベーションというプロジェクトに、デザイン思考の講師(Trainer)として携わった。修士課程を経て、長年の夢だった母校のバグダッド工科大学の講師を務めている。

「もともとはごく普通の学生でした。やりたいことがはっきりせず、大学を卒業して良い仕事に就ければいいと考えていました。変わったのは講師になってからのこと。理論的な知識と現実の世界での実践を組み合わせる―。イラクの学術界ではあまり見られないやり方での指導を経験したことがきっかけです」

国連開発計画の指導者養成(ToT)ワークショップにて

「在学中、起業家精神やリーダーシップ、チームで連携することなどについて、同級生などに自分の知識を伝え始めていました。履歴書の書き方や面接試験の対策など、就職のための手助けも。これ自体が仕事になると思うようになり、講師になることにしました」

大企業や複数の大学から就職説明会の開催を頼まれるまでになったが、最初から順風満帆だったわけではない。

 

勉強を進めるハッサン(バクダッドにて)

「中でも難しかったのは、大学で働き始めること。理系の学生がリーダーシップスキルを学ぶ必要はないと考える指導者が多く、納得してもらうのは簡単ではなかった。多くの反対者は、世界が急激に変わりつつあることに気づいてない60代を過ぎた年配者でした」

就業前の2016年、国連ユニタールの研修に参加した。「最高に魅力的でした。やりたいことは見つかったけど、何から手を付けていいのか、何を考えておかなければいけないのか、悩んでいた時期だったのです。研修で得た知識やスキルすべてが新鮮で、とても役に立つと感じました。外部環境分析ツールのPESTLE(政治、経済、社会、技術、法律、環境)分析は特に素晴らしかった。一緒に学んだ24人の研修生はいい友達になり、今も毎月第2木曜に、お互いのプロジェクトの話などを楽しんでいます」

イラクの人々は困難な時代を生き抜いてきており、若い世代にとって、明るい未来を想像することは難しいかもしれない。しかし、ハッサンは将来を悲観することなく希望に満ち溢れている。「英語も堪能で高学歴なのだから海外で働いたら?と友人や知り合いによく言われます。でも、自分の国の明るい未来と若者の可能性を信じているんだ、と答えているんです。ここで、今、よりよい未来をつくりあげられる、とね」

28歳になったハッサンは国連開発計画のAccelerator Labsで問題解決プロジェクトチームのリーダーとして、イラクが直面する21世紀の課題に対する解決策を模索している。また、地域のボランティアとともに、起業家支援のためのデザイン思考に関する研修マニュアルを初めて作り上げたところだ。

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